映画の原作は古典的な人気SF小説シリーズの一部をまとめたものですが、映画はとても現代的にアレンジされていて、とても楽しく見る事ができました。
スターシップトゥルーパースをポジティブな目で書き直したような映画
テレビCMで予告編映像を観た印象としては、エンダーというニュータイプのような少年の新人類的な能力で、超艦隊を操り地球を滅亡から救う、という内容かなと、ほぼバレバレな予告編だったため、まったく見る気がなかったのですが、面白いぞ、とおすすめする友人におされて観た映画という消極的な動機での閲覧。でしたが、面白かったです。M・ナイト・シャラマン監督のラジー賞作品「エアベンダー」と混合してあまり興味なかったからか、予想外でした。
「サードチルドレン」とか「戦いたくない」とか、エヴァンゲリオンを連想させる予告編とはまったくちがい、トラウマを持ちながらも、常人より高いメンタリティーとIQを持つ少年が主人公はEVAの伸二君とは真逆の性格。
SFですが、特撮で見せるというより、少年の葛藤や成長で魅せる映画に仕上がっていて、SFファンでなくても楽しめる内容。宇宙からの侵略テーマとしては多くの映画がありますが、特に思い出した映画は「スターシップトゥルーパース」。が、悪趣味な映像で有名なポール・バーホーベン監督のそれとはまったく真逆の、まっすぐした作風が好感もてます。(トータルリコールとか、氷の微笑とか、バーホーベン映画は好きです)
SFというより学園もの、が!面白い!
反対に、特撮CGとして期待していた決戦シーンはそれほどでもなくあっけないほどなので、スターウォーズ的なドンパチを期待してみると失望するかもしれません。SF映画の醍醐味である、宇宙船や建造物など、造形美術としての魅力も薄い。
海賊船ミレニアムファルコン号引退のあと、こんな偉いさんになっているんだろうなと想像を巡らせる点で、ハリソンフォードの役は好感触。ラストの終わり方も、予想できなかった意外な展開に思わずグッときてしまいました。
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ゲームであるからには大人は戦場に向かない。陰謀を除いては…
「ゲーミフィケーション」という言葉が時代のキーワードになっているこんにちに相応しく、この映画で登場する近未来は教育からセラピー、友達関係や戦争、和平交渉まですべてゲームとして描かれ、遊び感覚で競争を煽り、強い人間を育てようとしている強権的な社会を描いている点でも、スターシップトゥルーパースの薄気味悪さがスマート化に描かれ、ぞっとする面でもある。
戦争がゲームであるからには、大人より少年のほうが殺戮・虐殺に向いている。正義感をのぞいては。というテーマにも繋がっている。
これは、少年エンダーの目ヂカラを観る映画
少年エンダーの成長過程にほとんどの時間が割けられているが、少年役の魅力とともに見所が多く、SF映画の中での不自然になるのではと心配してしまう学園的なシーンも違和感なくストーリーに集中できるくらいよくできた印象。ハリーポッターの魔法学校のような感じでしょうか。悪ガキどもの葛藤シーンがなかなか目が離せないくらい緊張感あって面白かったです。
特にエンダーの目ヂカラがいい!中性的で何かを背負ったようなあの視線。「ヒューゴの不思議な発明」の主人公とおなじ役者で、知的。まるで、ヴェネクト・カンバーバッチの少年時代のような。劇中も彼の眼球ドアップが何度も映されます。
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エンダーのゲームを観て、思い出した映画
- スターシップトゥルーパース(隊の育成とバグズ対人類という構図で)
- インディペンデンスデイ(敵母艦への体当たりシーン)
- ほしのこえ(敵モンスターの目的が不明という点で)
- スターウォーズ(ダークサイドを必要なスキルとして描いている禁断の視点)
- 超時空要塞マクロス(果てしない敵の量)
- マトリックス・レボリューション(敵戦闘機のにょろにょろした動き)
- 愛と青春の旅立ち(前は上官だった監督が…)
- ヒューゴの不思議な発明(主人公の少年と、お爺さんが競演してる点で)
- コンタクト(心象世界での意思伝達)
- 未知のと遭遇(待ち合わせの山)
未知との遭遇「待ち合わせの山(デビルズタワー)」のコンテクスト?(※ネタバレ注意)
ゲームを通し、接触をとろうとする異星人は少年に対し、待ち合わせとなる山の形を、印象に残る方法で伝えている。山をメッセージと気付くまでの流れが、スピルバーグのSF映画「未知との遭遇」のデビルズタワー国定公園を思い出させる。わざと作者が思い出させるように意図して作っているなら、この戦争がどれほど愚かなものか両映画の対比から思い知らされる。一方ではピアノと音符で友好的な意思疎通をし、一方では反目しあう。両映画の違いは異星人の姿だ。つまり、争いの要因が「昆虫型」という外見的理由だけだとしたら…あり得ない話だが、現に地球だけでも現実に起こっていること。
いじめっ子に勝つ為に昆虫の標本を使って抵抗したり、兄には昆虫のマスクをかぶせられ見下された少年エンダーにとって、昆虫は他人ではなかった。この点、映画でもっとちゃんと描いてほしかったが、ハリウッド映画は、敵を同情的に描くことが御法度?なのだろうか。そういう「もののけ姫」的なストーリーは大衆映画には皆無な気がする。昆虫絶滅、という「勝利」を目にし、惑星規模の罪悪感にうなだれる主人公。(昆虫駆除を人間の悦び=快楽として描いている点でスターシップトゥルーパースと全く対照的)
この映画で登場した好きなセリフ
「敵は、自分の短所と長所のほどんどを教えてくれる、真の友人だ」
「2人兄弟法」により、望まない3人目(サード)の子として生まれ、兄弟や周辺から後ろ指をさされて育ち、世間に対し斜に構えた性格と、我を忘れる闘争性で、いじめっ子から身を自らで守っり続けてた少年エンダーに向けて、まるで今日までステップアップを見届け、振り返りように投げかけられたのがこのセリフ。ジーンと来ました。